- 多嚢胞性卵巣症候群
(PCOS;POLYCYSTIC OVARY SYNDROME)とは - 多嚢胞性卵巣症候群
(PCOS;POLYCYSTIC OVARY SYNDROME)の原因 - 多嚢胞性卵巣症候群
(PCOS;POLYCYSTIC OVARY SYNDROME)の症状 - 多嚢胞性卵巣症候群
(PCOS;POLYCYSTIC OVARY SYNDROME)の検査と診断 - 治療方法
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の
リスクや症状は? - よくある質問
多嚢胞性卵巣症候群
(PCOS;POLYCYSTIC OVARY SYNDROME)とは
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:Polycystic Ovary Syndrome)は、生殖機能異常と代謝異常が複雑に絡み合った症候群で、未だにわかっていない部分が多い病気です。生殖機能異常として、排卵障害や月経不順を引き起こします。卵巣に複数の小さな卵胞がみられるのが特徴的であることからこの名がついています。
月経不順や不妊、肌荒れ、多毛、肥満など、外見や健康に関わる悩みが重なることが多く、20~30代の女性によく見られます。
PCOSは比較的よくある疾患で、妊娠希望のある方だけでなく、今は妊娠の希望がない方でも将来の健康リスクにも関係するため、早期の発見と適切な対処が大切です。
多嚢胞性卵巣症候群
(PCOS;POLYCYSTIC OVARY SYNDROME)の原因
PCOSのはっきりとした原因はまだ解明されていませんが、以下のような複数の要因が関与していると考えられています。
ホルモンバランスの乱れ
PCOSでは、卵胞刺激ホルモン(FSH)が低く、黄体化ホルモン(LH)が高い、あるいは男性ホルモン(アンドロゲン)が過剰になる傾向があります。これにより卵胞が成熟しにくく、排卵障害が起こります。
インスリン抵抗性
インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」があると、男性ホルモンが過剰に分泌され、排卵がうまくいかなくなります。また、2型糖尿病や肥満との関連も指摘されています。
遺伝的要因
家族にPCOSの方がいる場合、同様の症状が出やすいことがあるため、遺伝的素因も無視できません。
多嚢胞性卵巣症候群
(PCOS;POLYCYSTIC OVARY SYNDROME)の症状

PCOSの症状は多岐にわたりますが、主に以下のような変化が見られます。
- 月経不順(無月経、稀発月経)
- 排卵が起こらないことによる不妊
- にきびや皮脂の増加
- 体毛が濃くなる(特に顔やお腹)
- 肥満(特にお腹まわり)
- 抜け毛(男性型脱毛症)
すべての症状が出るわけではなく、「月経不順しかない」「不妊だけが気になる」といったケースも珍しくありません。
多嚢胞性卵巣症候群
(PCOS;POLYCYSTIC OVARY SYNDROME)の検査と診断

PCOSは、問診・身体診察・超音波検査・血液検査などを組み合わせて診断されます。
問診・症状の確認
月経周期の乱れ、にきびや多毛の有無、妊娠歴などを丁寧に伺います。
超音波検査
卵巣の中に小さな卵胞が多数みられるかを確認します(ネックレス状に見えるのが特徴です)。
血液検査
- LH・FSH・テストステロンなどのホルモン値
- インスリン抵抗性の評価
- 甲状腺ホルモンやプロラクチンの値も確認し、他疾患を除外します
診断基準の一例(ロッテルダム基準)
以下のうち2つ以上を満たすとPCOSと診断されることが多いです。
- 排卵障害(月経不順など)
- 高アンドロゲン血症(血液検査または症状)
- 多嚢胞性卵巣の画像所見(超音波)
治療方法
治療方針は、「すぐに妊娠を希望するかどうか」によって大きく異なります。
すぐに妊娠を希望されていない場合
目的は、症状の緩和や将来の健康リスク(糖尿病・脂質異常症・子宮内膜がんなど)を防ぐことです。
生活習慣の改善
• 食事療法(低糖質・バランスのよい食事)
• 適度な運動による体重管理
→体重を5~10%減らすだけで月経が整うこともあります。
ホルモン療法
• 低用量ピル(ホルモンバランスの調整と月経周期の安定)
その他
• にきびや多毛に対する皮膚科的ケアも併用されることがあります。
妊娠を希望される場合
排卵誘発や妊娠に向けたサポートを行います。
排卵誘発剤
• クロミフェンやレトロゾールなどで排卵を促します。
• 効果がない場合は、HMG製剤+hCG注射による高度な排卵誘発も検討されます。
インスリン抵抗性の改善薬
• メトホルミンを併用することで排卵率が改善することがあります。
人工授精や体外受精
• 排卵誘発とタイミング法で妊娠に至らない場合は、ステップアップ治療が必要となることもあります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のリスクや症状は?
PCOSは月経や妊娠に関する問題だけでなく、将来の健康にも関わるリスクがあります。
糖尿病・代謝異常
インスリン抵抗性を伴いやすいため、2型糖尿病やメタボリックシンドロームのリスクが高くなります。
子宮内膜増殖症・内膜がん
無排卵状態が続くと子宮内膜が厚くなりすぎ、がん化するリスクが上がることがあります。
精神的ストレス
月経不順や不妊に悩むことによるストレスや抑うつ症状のリスクも指摘されています。
そのため、妊娠を希望されない場合でも、定期的な経過観察や治療が大切です。
よくある質問
PCOSは治りますか?
完全に「治る」というよりは、症状をコントロールしていくことが治療の目的となります。体質に合わせたケアを続けることで、排卵や月経が整うこともあります。
月経があるのにPCOSと言われました。なぜですか?
排卵を伴わない「無排卵月経」があるため、見かけ上は月経が来ていても、排卵がうまくいっていない場合があります。基礎体温などで排卵の有無を確認することが重要です。
やせたら症状は改善しますか?
体重を5~10%落とすだけでもホルモンバランスが整い、自然排卵が起きやすくなる場合があります。無理なダイエットではなく、医師の指導のもとで生活改善を目指しましょう。
自然妊娠は難しいですか?
排卵のタイミングがつかみにくいため、妊娠しづらい傾向はありますが、排卵誘発など適切な治療を行えば、多くの方が妊娠に至っています。
当院では、PCOSの正確な診断と、ライフステージやご希望に応じた治療方針のご提案を行っております。月経不順、不妊、肌荒れなどの症状が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。